MAP-EXTRA: インターネットにおける広告行為                       パトリック・クリスペン                            谷野 義昭 訳    “私がピアノの前に座った時、彼らはみな声を出して笑いました。    しかし、おおー!、私がピアノを弾きはじめたとき...”    -- John Caples, legendary advertisement for mail-order      piano lessons, 1925 この講義は正規の時間割の中にはありませんが、「MAP09:スパミングと都市 の伝説」に対するよい補講になるだろうと考えました。 インターネット上では状況が急速に変化しています。そして、おそらく広告 の分野以上に急速に変化しているものは他にないでしょう。しかし、ここし ばらく落ち着いているように思われる二三の一般原則があります。 まず初めに、一般的に言って、(インターネット上での広告は)してはいけ ないのです。今あなたがある製品を作っている会社で働いているとして、試 みにその製品を宣伝するのにインターネットを使えば、あなたは注文よりも 非難攻撃の方をより多く受けることになるでしょう。 許されている広告行為 例外が二三あります。いくつかの音楽分野のニュースグループにおいては、 あなたのバンドが作った手製の、または仲間うちで配ったレコーディングを 広告しても、異議を唱える人はほとんどいないでしょう(例外については以 下を参照)。また、*たった1台の* コンピュータまたは自転車を持って いてそれを売るために、適当な Usenet ニュースグループ(例えば、 misc.forsale.computers.pc-clone、rec.bicycles.marketplace )に広告を 出すことは許されることです。しかし、倉庫一杯のコンピュータまたは自転 車を保有し、その商品を販売することを業としている時には、同様の行為を することはおそらく許される限界を越えることになるでしょう。 第2の例外は、Web に関することです。ある会社がホームページを開設して いるのに、自社製品やその流通業者などの情報を *掲載していない* な らば、これを呼びだした Web サーファーは怒るでしょう。 第3の例外は、「 MIL-STD-1750A(という米軍規格に準拠した)コンピュー タ用の Ada コンパイラを作成している会社はどこですか」というような専 門的な質問を誰かがした時に、「わが社です」と答え、かつ連絡先を教える ような場合で、これは一般的に問題なしと考えられています。ただ,あなた の投稿記事は情報であって、宣伝文句ではないように、必ずしておいてくだ さい。“見え透いた市場向けの宣伝”めいたことを言う回答者をしばしば見 受けるでしょうが、それでも彼は詐欺師だと責められることはありません。 詐欺行為 詐欺行為はまったく別の問題です。音楽分野のニュースグループのいくつか で、新手の宣伝行為が見受けられます。誰かが、グループXのある新盤CD について誉めちぎった評論をメッセージとして投稿します。しばらく後に彼 は、グループYやアーティストZについても誉めそやします。彼がつねに発 言しなければならないものは、新盤CDについての誉めちぎりの評論ばかり であることが判ってきます。さらに、彼がその作品を誉めちぎるアーティス トのすべてが、同じ大手レコード会社に属していることが判ってきます。か くして少しばかり調査すれば、われらが豪傑はこのレコード会社のために暗 躍していることが判明してきます(今や、いつも同じ手を使うとは限りませ んが)。 これは何も音楽分野のニュースグループに限ったことではありません。よく 知られているシナリオは、次のようなものです。まず人物Aが、「Wをする のに最良の製品は何でしょうか」のような質問をします。するとすぐに、人 物Bが「Rソフトウエア会社の新製品Pがその問題を解決するのに好適で、 値段も安く、インストールも楽だし、みんなこれを買うべきですよ」と答え ます。しばらくすると、別のニュースグループに件(くだん)の人物Aが別 の質問を引っさげて再登場し、そして果たせるかな、Rソフトウエア会社の 製品Qがその分野における頭痛の種に対する特効薬である、という回答が現 われます。 ある会社がなぜ良からぬやり方をしているとの評判を得るような危険を冒す のか、私にはまったく解せないことです。もしあなたが、これはうまいやり 方だと考えるほど浅はかな人ならば、この手のぺてん師を暴くことを楽しみ にしている人々がインターネット上にいること、そしてあなたは、たちまち のうちに看破されてしまうことに、どうぞ気づいていただきたい。 適切なフォーラム LISTSERV および Usenet の各ニュースグループへのEメールの送付につい ては、すでに「MAP09:スパミングと都市の伝説」で述べられています。Eメー ルアドレスのメーリングリストを販売している会社があります。それはやら ないでください。私は、がらくたのEメールの将来は恐ろしいものだと思っ ています:なぜならば、従業員に会社の資源のそのような乱用を許しておく のではなく、むしろインターネットの使用を禁止しようとしている会社や組 織が、現にあるからです。 また、「自転車売りたし」の広告を rec.arts.marching.drumcorps や talk.politics.tibet に出すことは時間の浪費であることは、まったく言わ れるまでもないことでしょう。 しかし、注意を要するポイントがあります。 Usenet の階層構成の多くは、 独特の "marketplace"(という広告専門の)ニュースグループを有していま す。その隣接グループはいずれも、広告を *望んでいない* と考える方 が無難です。たとえば、rec.music.makers.marketplace というニュースグ ループがありますから、rec.music.makers.synth では「シンセサイザ売り たし」の投稿は歓迎されないだろうと考えるのが賢明な判断です。 活発な Usenet ニュースグループをリストアップした List of Active Newsgroups が、news.answers 上で利用可能です。"marketplace" や "forsale" (という売買専門の)ニュースグループが、どこにあるかを見つ けるのに利用してください。 広告という過敏な領域に関与すれば、あなたが公正でないという世評を得て しまうことは、ごく簡単にできてしまいます。本当は、あなたがまったく何 も知らなかったというだけなのに。広告をする前によくルールを知ることに よって、あなたの評判を傷つけないようにしてください。 参考資料 広告に関するインターネットの方針や意見は急速に進展していますので、彼 の記事は事実上すでに時代遅れであることは間違いないところです。Usenet newsgroup news.answers にある2つの記事、すなわち、 "swap-guide"(売 買案内)および "Advertising FAQ"(広告宣伝に関する FAQ )は、インター ネット上での売買行為にまつわる文化的な論点のいくつかについて議論して います。 “インターネット上で適切な方法で商品やサービスを取引すること”を論議 する目的で、LISTSERV INET-MARKETING がほんの二三カ月前に発足しました。 これに参加するには、 SUBSCRIBE INET-MARKETING あなたの名前と所属組織名 を含むEメールのメッセージを listproc@einet.net に送って(登録して) ください。 同じサイトにあるもう一つのリストである WWWORDER (同様な方法で登録し てください)では、“World-Wide Web における注文書による合意に関する 実務上の問題”について論議しています。 Roadmap 原作著作権所有者   (c) 1994 Patrick Douglas Crispen                PCRISPE1@UA1VM.UA.EDU 翻訳者            Yoshiaki Tanino                QZB06372@niftyserve.or.jp 日本語版著作権所有者     (c) 1995 Reiko Sekiguchi                sekiguch@ulis.ac.jp 本稿は、1995年3月19日、パトリック・クリスペン氏から関口が翻訳・ 配布の許可をいただいて、翻訳・配布しているものです。