ANSI標準プロトコル Z39.50 を用いた日本語検索・試作システムの実演
安齋 宏幸、山本 毅雄、石塚 英弘
図書館情報大学
〒305 つくば市 春日 1-2
Tel: 0298-59-1111(代表), Fax: 0298-59-1093
E-mail:{anzai, yamamoto, ishizuka}@ulis.ac.jp
概要
ANSIによる標準情報検索プロトコルZ39.50を用いて、図書館情報大学附属図書館和図書目録と国立国会図書館機械可読目録(JAPAN/MARC)を提供する、二つの日本語書誌情報サーバを試験的に開発した。実演では試作サーバの紹介を行う。
キーワード
Z39.50, OPAC, JAPAN/MARC, 日本語, 書誌, 目録
The demonstration of Z39.50 servers for Japanese bibliographies
Hiroyuki ANZAI, Takeo YAMAMOTO, Hidehiro ISHIZUKA
University of Libarary and Information Science
1-2 Kasuga, Tsukuba, Ibaraki, 305 Japan
Tel: +81-298-59-1111, FAX: +81-298-59-1093
E-mail:{anzai, yamamoto, ishizuka}@ulis.ac.jp
Abstract
Two experimental Z39.50 (ANSI standard for Information Retrieval) servers for Japanese bibliographic databases, JAPAN/MARC and ULIS-OPAC, are developed.
Keywords
Z39.50, OPAC, JAPAN/MARC, Japanese, bibliography, catalog
1. ANSI Z39.50 とは
Z39.50[1]はANSI(American National Standards Institute)標準である"Information Retrieval Service Definition and Protocol Specification"の識別番号である。クライアント-サーバ環境(Z39.50の仕様ではクライアントをorigin、サーバをtarget、検索セッションをassociationと呼ぶ。本稿ではより一般的な語であるクライアント、サーバ、セッションという言葉を用いる。)で、複数の情報サーバにたいする検索を支援する。
ANSIの認可のもとNISO(National Information Standards Organization)が情報検索や流通の分野での標準化の一部としてZ39.50を整備し、1988年以来米国議会図書館のThe Network Development and MARC Standards Officeが管理している。 Z39.50は現在のところ国際標準ではないが、ISO/DIS 10162及び10163(探索及び検索プロトコル)として国際標準の原案に採用されることが決まっている[2]。
1.1 Z39.50による利点
従来のWorld Wide Webによる情報検索サービスでは、検索結果集合の蓄積やそれらの間でのブール演算、ネットワーク上の複数のデータベースに対する同時検索などが行えない。また、書誌情報を提供するサーバがインターネット上に多数あるにも関わらず、それらを一つの分散情報システムとして利用することはできない。
Z39.50はクライアント-サーバ間で検索セッションを維持することで、対話的な検索処理を実現する。また、検索質問、検索語、アクセスポイントの指定法、レコードの返戻、データの異機種間のやりとりを規定することにより、複数の情報サーバを一つの情報システムとして利用することを可能にする。
2. 試作システムの実演について
2.1 試作の位置付け
本研究はZ39.50を用いて試験的なサーバを開発することにより、Z39.50で日本語書誌情報を提供するための問題点と、Z39.50による標準化の利点を得るために必要な諸条件を明らかにすることを目的とする[3][4]。
2.2 試作サーバ
ふたつのサーバを試作した。これらのサーバやインタフェースはC言語で開発した。試作と動作環境にはUNIX WSを用いた。
・JAPAN/MARC サーバ
1年分のJAPAN/MARCデータベースのローマ字の情報について、Z39.50の検索要求に応じるサーバを構築した。このJAPAN/MARCシステムは、情報処理学会情報学基礎研究会における先の報告[5]のcgi(common gateway interface)用サーバにZ39.50インタフェースをフロントエンドとして開発し、実現した。参考図を図1にしめす。
・ULIS-OPAC サーバ
図書館情報大学附属図書館の目録データ(ULIS-OPAC)のサブセットを日本語データとして提供するZ39.50基本サーバを構築した。大型汎用計算機HITAC M660で提供されていたULIS-OPACデータベースからレコードをコピーし、UNIX WS上で必要なデータの変換を行った。サーバについての参考図を図2にしめす。
2.3 実演システム
・JAPAN/MARC システム
JAPAN/MARCサーバでは、データベース中のローマ字に変換できる書誌情報をローマ字で提供している。この限りでは、日本語の文字コードの問題は生じない。Z39.50 GUIクライアントであるWillow[6]を用いた検索事例を紹介する。実行画面を例1として示す。
・ULIS-OPAC システム
ULIS-OPACサーバでは、日本語(和書誌)の書誌情報を提供している。日本語の文字コードを正しく伝えることのできるZ39.50クライアントソフトウェアについて、筆者らは存在を確認していない。このため、当面サーバを評価する目的でZ39.50 ULIS-OPACサーバに対しcgiを通して疑似的にstatefulな検索を行うことのできる検索ページを、WWWのフォーム機能を用いて作成した。実行画面を例2として示す。
謝辞
研究対象データベースとしてJAPAN/MARCの利用許可を頂いた国立国会図書館に感謝致します。ULIS-OPACの利用許可を頂いた図書館情報大学附属図書館に感謝致します。
参照文献
[1]Library of Congress. ANSI/NISO Z39.50-1995 Information Retrieval (Z39.50) : Application Service Definition and Protocol Specification. <Available from http://lcweb.loc.gov/z3950/agency/>.
[2]ISO/TC46国内対策委員会. ``7年度 データベース表記・表現専門委員会議事抄録''.情報・ドキュメンテーション標準化ニューズレター. No.8, p.7 (1996.6).
[3]安齋 宏幸. Z39.50の日本語による紹介. <Available from http://www-student.ulis.ac.jp/‾anzai/z3950/homepage.html>.
[4]安齋 宏幸, 山本 毅雄, 石塚 英弘. Z39.50を用いた日本語書誌情報サーバの試作. 情報処理学会情報学基礎研究会報告.Vol.96, No.116, p.9-16 (1996.10).
[5]安齋 宏幸, 山本 毅雄. WWWによるJAPAN/MARCの提供実験. 情報処理学会情報学基礎研究会報告. Vol.95, No. 106, p.9-16 (1995.11).
[6]Willow Information Center. Willow information center homepage. <Available from http://www.cac.washington.edu/willow/home.html>.
図1 JAPAN/MARCサーバ
図2 ULIS OPACサーバ
例1 JAPAN/MARCシステム実行画面
例2 ULIS OPACシステム実行画面