児童の成長の段階において、正常な成長を遂げるために達成されなければ ならない課題は発達課題と呼ばれる。それらのうち精神的成長に関わる発達 課題には読書が役立つと考えられる。このシステムは、親の立場で子どもに 望むいくつか特定の発達課題の育成に役立つ児童図書を選定するためのシス テムである。「ユーモアに親しむ」、「他人の人格を尊重する」など、10 の発達課題をもとに多数の児童図書の評価を行った。その評価をもとに多変 量解析を行った結果、2次元平面上で発達課題と児童図書の関係を視認する ことができ、それによって児童図書の選択を行うことができる。
システムの説明を次に述べる。
システムの使用法について、まず「児童書選択」画面を次に示す。
「児童書選択」画面の操作は画面中の「操作の説明」をクリックして得られる 次の「児童書選択の操作説明」に従って行う。
最初に「区画指定」による児童書選択について説明する。上述の「児童書選択」画面 は区画指定画面となっている。この画面で例えば4行4列目の区画をクリックすると 次のページの結果を得る。つまり、この区画に含まれる6冊の児童書名が列挙される。
次に「発達課題指定」による児童書選択について説明する。次はそのための 画面である。
この画面で例えば「自主独立」の点をクリックすると次の画面となる。
画面に説明があるように、発達課題「自主独立」を評点Aとする児童書のみの 分布が現れる。この画面で例えば1行2列目の区画をクリックすると次のページの 結果を得る。つまり、この区画に含まれる5冊の児童書名が列挙される。
注1.児童の発達課題からみた児童図書の評価について
この研究で用いた発達課題とそれによる児童書(児童図書)の評価値(A,B,C) は筆者らの文献1)による。100冊の児童書を対象に分析している。
注2.多次元主成分分析について
本稿において行った多次元主成分分析について説明する。
各児童書を、発達課題の評価値を成分とする10次元空間上のベクトル(児童書 ベクトル)
Xi = (xi1,xi2,...,xij,..,xi10)
xij= 児童書 i の発達課題 j による評価値
(i=1,...,100, j=1,...,10 )
で表し、これを基に主成分分析を行う。評価値A,B,Cはそれぞれ 1.0,0.5,0.0 と換算し,また、児童書ベクトルの各成分ごとにその値を次のように規格化した。 次元 j につき x1j,x2j,...x100j をその平均値が 0,分散が 1 となるように規格化 した。
発達課題空間の第1主成分を横軸、第2主成分を縦軸とする平面を発達課題平面 と呼ぶ。この平面上に各発達課題の基本ベクトルおよび各児童書ベクトルをプロット する。発達課題点は基本ベクトルをプロットしたもので、児童書の分布は各 児童書ベクトルをプロットして得たものである。発達課題 j の基本ベクトルは
1 2 3 ....j....10
( 0,0,0,...,1,...,0) である。
なお、本稿で用いた手法は筆者(田畑)が文献2)において大学の教官の研究業績 の分析のために導入したものである。
注3.このシステムはWWWブラウザで利用できるように作成されている。
ディジタル図書館ネットワークのホームページ
からこのシステムをアクセスできるようにする予定である。
2)図書館情報大学自己評価委員会編.ULISの明日に向かって.つくば市, 図書館情報大学,1995,p.41-51,