「パイロット電子図書館システム事業」の概要

堀口 光
藤原 達也
通商産業省機械情報産業局情報処理システム開発課
100 千代田区霞が関1ー3ー1
Tel:03(3580)3922 Fax:03(3501)6631 E-mail:LDF03444@niftyserve,or,jp

概要

 通商産業省では、情報処理振興事業協会において、国立国会図書館、文部省、 自治省、科学技術庁との協力の下で、「パイロット電子図書館システム事業」を 実施することとしており、この紹介を行う。

 ここでは、文献等を電子化した上でデータベース化し、ネットワークにより内 外に提供するパイロット事業を実施することによって、ニーズ面、技術面での課 題の摘出と解決を図るとともに、より高度な検索や文書処理等を可能とする先進 的技術開発を行う。

Outline of the Pilot Digital Library System Operations

Hikaru Horiguchi
Tatsuya Fujiwara
MITI,Machinery and Information Industries Bureau,
Information Systems Development Division
( Ministry of International Trade and Industry )
1-3-1 Kasumigaseki,Chiyoda-ku,Tokyo,100 Japan
Tel:03(3580)3922 Fax:03(3501)6631 E-mail:LDF03444@niftyserve,or,jp

ABSTRUCT

  The Ministry of International Trade and Industry ( MITI ) will carry out " Pilot Digital Library System Operations " within the Information Technology Promotion Agency, Japan ( IPA ) in cooperation with the National Diet Library, the Ministry of Education, Science and Culture, the Ministry of Home Affaires, and the Science and Technology Agency.

  The overview of this operations, which compile literature into databases after rendering them into digital form and then to supply them through networks, will be realized to identify and solve demand-related and technical problems. And advanced technical development which allows more advanced retrieval and document processing will also be implemented.


1.展望

 世界には、膨大かつ多岐にわたる知的財産が存在しているが、これらの資産の 多くは、従来各地の図書館に書物などの形で収集・蓄積されているため、人類の 共通財産として、世界の人々がこれを迅速に活用することはできなかった。

 しかしながら、近時の情報処理技術、ネットワーク技術の進展により、次のよ うな機能を有する電子図書館が構築され、世界に分散しているあらゆる知的資産 を個人の知識ベースとして活用できる環境を創り出すことが技術的には可能とな りつつある。

・世界中の図書館へのネットワークによるアクセス

情報(文献、絵画、映像、音声など)が電子的に保存され、利用者は、ネットワ ークにより、自宅、学校などから、世界中の図書館に蓄積されている情報にアク セスできるようになる。

・高度な検索機能

あいまいな指示でも検索できたり、求める文献等がどこの図書館に所在するかが 分からなくても検索できるような高度な検索手法によって、利用者が容易に情報 を得られるようになる。

・個人の幅広い創作物の蓄積と一般への提供

経済的な理由などにより、従来出版できなかったような個人の創作物を蓄積し、 広く一般に提供することができるようになる。

2.現状と具体的な施策の方向

2.1 図書館ネットワークの構築

2.1.1 現状

電子図書館において、ネットワークを通じて文献等の検索を行うためには、まず 各図書館の蔵書の書誌・所在情報の流通が図られている必要がある。 米国においては、OCLC(Online Computer Library Center)、RLIN(Research Libraries Information Network)、WLN(Western Library Network)等の ネットワークが構築されており、ほとんど全ての公立図書館、大学図書館が接続 され、各図書館の書誌・所在情報の検索が可能となっている。我が国においては 、学術文献の全国総合目録の構築と相互貸借の効率化を目的として、学術情報セ ンターに大学図書館を中心に300以上の図書館が接続され、書誌・所在情報の流 通が図られており、各地の公共図書館を結ぶネットワークは、一部の地域におい ては構築されているが、全国的なネットワークは未だ構築されていない。 この要因としては、図書館におけるコンピュータ導入の遅れや、各図書館が作成 する書誌情報の統一化が図られておらず書誌・所在情報の流通のための基盤が形 成されていないことなどが挙げられる。(米国においては、US MARCが統 一的に用いられているが、我が国においては、JAPAN MARC、民間MA RC等が存在し、各図書館では互い共通利用が図れない形で書誌情報データベー スが構築されている。)

2.1.2 具体的施策−総合目録ネットワーク化の推進

通商産業省としては、21世紀に本格的な電子図書館を建設するとの国立国会図 書館の構想を踏まえ、また、上記の電子図書館の機能を想定しつつ、情報処理振 興事業協会において、国立国会図書館、文部省、自治省、科学技術庁との協力の 下で、「パイロット電子図書館システム事業」を実施する。 その一環として、全国の図書館がネットワークにより接続され、オンラインによ るアクセスが可能となるシステムを構築するための第一段階として、書誌・所在 情報の相互流通を図るための事業を実施する。

2.2 電子図書館システムの構築

2.2.1 現状

 電子図書館の実現のためには、図書館のネットワーク化とあわせて、文献等の 蓄積や検索などに関する技術開発や実証実験を通じて、蓄積、検索機能の高度化 を図っていくことが重要である。 現在、米国においては、電子図書館実現のための実験として、カリフォルニア大 学の9キャンパス(バークレー、UCLA、UCSF等)で電子的に蓄積された 文献の内容をネットワークを通じて流通させる実験を行っているほか、コーネル 大学を中心とするCOREプロジェクトやカーネギーメロン大学のマーキュリー プロジェクト等において検索手法などに関する研究が行われている。

 我が国においては、学術情報センターでデータベースの構築を含む電子図書館 の実証的研究開発が行われている。また、国立国会図書館等においても電子図書 館の機能に関する基礎的な調査研究が行われているところであるが、電子図書館 システムの構築に向け、今後一層の研究を行う必要がある。

2.2.2 具体的施策−パイロット電子図書館システムの構築

「パイロット電子図書館システム事業」の一環として、将来の電子図書館のモデ ルとなりうるパイロット電子図書館システムを構築し、以下の事業を行う。

(1)文献等の電子的蓄積とネットワークによるアクセスのためのパイロット事業

 文献等を電子化した上でデータベース化し、ネットワークにより内外に提供す るパイロット事業を実施し、ニーズ面、技術面での課題の摘出と解決を図る。

(2)電子図書館システムのデータ利用・検索・提供系の研究

 既存の技術を活用して、検索、閲覧を容易かつ効果的に行うためのユーザイン タフェースの研究や実証実験を実施するとともに、多種多量情報の蓄積・管理技 術、類似語による検索や意味的検索等の高度検索・利用技術、分散情報の統合利 用技術の開発等を行い、電子図書館システムの一層の利便性向上に資するものと する。

表:電子図書館システムの構築に活用しうる技術開発課題 No.1, No.2